機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアとは

機能性ディスペプシアとは機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia(FD))は、内視鏡検査や腹部超音波検査などの検査で異常がないにも関わらず、数か月~数年の単位で慢性的に胃の張り、すぐに満腹になってしまいそれ以上食べられない、胃痛や胃の不快感、胃もたれといった上腹部の症状が続いてしまう疾患です。ストレスが症状に影響することが多く、特に食後に症状が強くなります。

機能性ディスペプシアは近年増加傾向で、10〜20%程度の方が経験すると言われています。
食後に胃が張る、すぐにおなかがいっぱいになる、胃の痛みや不快感などでお悩みの方は当院までお早めにご相談ください。


機能性ディスペプシアの原因

機能性ディスペプシアは以下のような要因が関係していると考えられています。

ストレスによる自律神経の乱れ 精神的なストレスなどが原因で、胃の動き(特に胃のふくらみ)が悪くなる。
胃の運動低下 胃の動き・ふくらみが悪く、食べ物が消化不良になる。
胃酸の分泌異常 胃酸が過剰または不足している。
ヘリコバクター・ピロリ菌感染 一部ではピロリ菌の除菌治療で症状が軽快することがある

機能性ディスペプシアの症状

機能性ディスペプシアは特に食後に以下のような症状が強くなります。

胃の張り
(満腹感)
食後に胃が張る。少量の食事でもすぐに満腹になり、それ以上食べられない。
胃の痛み みぞおち付近がさしこむように痛む。
胃もたれ 食後に胃が重たく感じる。
胃の不快感 ムカムカする、焼けるような不快感がある。

これらの症状が長い間続いている場合は機能性ディスペプシアの可能性があります。


機能性ディスペプシアだと、
すぐお腹がいっぱいになる?

機能性ディスペプシアの代表的な症状として早期満腹感(少し食べただけですぐに満腹になってしまい、それ以上食べられなくなる)があります。これは胃の動き、特に胃のふくらみが悪くなっているのが原因と考えられています。
1回の食事量を減らすかわりに食事回数を増やす、できるだけ消化の良いものを食べるといった食事の工夫や、薬(胃の動きを良くする消化管運動改善薬、胃酸の分泌を調整する酸分泌抑制薬)で症状が改善することも多いです。
気になる症状のある方は当院までご相談ください。


機能性ディスペプシアの診断

機能性ディスペプシアの診断には、内視鏡検査(胃カメラ)や腹部超音波検査などで、胃がんや胃潰瘍、胆石などの疾患がないことを確かめることが重要です。そのため、以下のような検査が行われます。

内視鏡検査
(胃カメラ)
胃や十二指腸にがんや潰瘍などの異常がないか確認します。
ピロリ菌検査 ピロリ菌感染がないか確認します。
腹部超音波検査 肝臓、胆のう、膵臓などに異常がないか確認します。
血液検査 貧血や炎症などがないかを確認します。

これらの検査で明らかな異常がない場合に、機能性ディスペプシアと診断されます。


機能性ディスペプシアの治療

機能性ディスペプシアの治療には、生活習慣の改善 と 薬物療法 の2つがあります。

生活習慣の改善

まず食生活、運動、休養などの生活習慣を整えることが大切です。

食生活のポイント

  • 消化の良い食事を心がける(油ものや刺激物は控える)
  • 規則正しく、決まった時間に食事をする。夜遅い時間の食事は避ける。
  • よく噛んで食べるようにする。

ストレスを溜めない工夫

  • 適度な運動や趣味の時間を作る
  • 十分な睡眠をとる

節酒・禁煙

過度なアルコール摂取や喫煙は胃のはたらきを低下させます。
できるだけ控え、胃に負担をかけない生活を心がけましょう。

薬物療法

それぞれの症状や原因に応じて、適切な薬を使用します。

消化管運動改善薬 胃の動きを改善し、食べ物の消化を良くする(例:アコチアミド、漢方薬)
酸分泌抑制薬 胃酸の分泌を抑え、胃の痛みを軽減する(例:プロトンポンプ阻害薬)
抗不安薬・抗うつ薬 自律神経の乱れやストレスを緩和する。

気になる症状がある方は、
お気軽にご相談ください

機能性ディスペプシアは、完全に症状を取り除くことが難しい場合もあります。しかし、生活習慣の見直しや薬物療法を組み合わせることで、症状を和らげ、ストレスの少ない生活を取り戻すことを目指しています。
「機能性ディスペプシアかな?」と思うような気になる症状がある場合は、当院にご相談ください。


機能性ディスペプシアのよくある質問

機能性ディスペプシアで背中の痛みはある?

機能性ディスペプシアでは、 胃痛や胃もたれなどが主症状ですが、みぞおち周辺の痛みなどが「放散痛」として、背中の痛みとして出現することがあります。しかし、背中の痛みは機能性ディスペプシアの典型的な症状ではなく、胃・十二指腸潰瘍、膵炎、胆石症などの他の病気で起こりやすい症状でもあるため受診を強くお勧めしています。

機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群の違いは?

機能性ディスペプシアは、発症部位が「胃」であるのに対して、過敏性腸症候群は、「腸」になります。二つは発症部位が異なりますが、いずれも検査で異常が見つからないにもかかわらず、症状が続くという共通点があります。

機能性ディスペプシアは指定難病?

機能性ディスペプシアは、厚生労働省の定める指定難病に含まれていません。そのため、機能性ディスペプシアの診断名で、難病としての医療費助成の対象にはなりません。

機能性ディスペプシアでうつ病になる?

機能性ディスペプシアは、胃の症状だけでなく、うつ病とも関係しているといわれています。鵜の不快感や痛み続くことがストレスとなり、気分の落ち込みや睡眠障害を引き起こす一方、もともとの不安傾向や抑うつ症状が機能性ディスペプシアを悪化させることもあります。 全ての機能性ディスペプシアの患者さんがうつ病になるわけではなく、早期に治療や生活習慣の改善などによって多くは防ぐことができると考えられます。

機能性ディスペプシアのお勧めの食事は?

機能性ディスペプシアの方は、消化のいい食べ物を選択することが大切です。 下記に一例をあげます。

  • 主食:白米、おかゆ、食パン、うどん
  • 主菜:鶏むね肉、ささみ、豆腐、白身魚、卵など
  • 副菜:にんじん、かぼちゃ、じゃがいも、大根、白菜など
  • 間食:バナナ、りんご、ヨーグルト、カステラ、ビスケット(脂肪分が少ないもの)など