肝臓・胆道・膵臓内科とは
(消化器病および肝臓専門医・指導医による診察)
肝臓・胆道・膵臓内科は、肝炎・脂肪肝・肝硬変・肝がんをはじめ、胆石症や胆のう炎、膵炎、膵のう胞など、肝臓・胆道・膵臓に関わる病気を専門的に診療する診療科です。
当院では、日本肝臓学会の肝臓専門医・指導医、日本消化器病学会の消化器病専門医・指導医が診療を担当し、各臓器の特性をふまえた検査・治療、生活習慣の改善指導まで一貫して行っています。
肝臓・胆道・膵臓はいずれも初期には症状が現れにくい臓器で、気づかないうちに病気が進行していることが少なくありません。
健康診断での指摘された場合、食後の不快感、背部痛、みぞおちの痛み、体重減少、黄疸などがみられる場合は、お早めに受診ください。
肝臓の働き
代謝
肝臓は、我々が食事から摂取した栄養素の多くを蓄積し、必要に応じてエネルギーに変換して生命活動に活かす代謝の役割を担っている重要な臓器です。しかし、過食や過度な飲酒など生活習慣が乱れると、肝臓に過剰な脂肪が蓄積されて代謝機能が低下し、身体に様々な障害を引き起こします。
解毒
肝臓には、体内に入った有害な物質を解毒して体外に排出する役割もあります。例えば、飲酒の際に摂取されたアルコールは、肝臓で酢酸や水、二酸化炭素などに分解されて体外に排出されます。
そのため、肝臓の病気で肝機能が低下すると、体内に有害な毒素が蓄積して他の臓器にも様々な悪影響が及ぶようになります。
胆汁生成・分泌
肝臓から産生される胆汁には、脂肪を乳化したり、タンパク質を分解して腸から吸収されやすくしたりする働きがあります。そのため、肝臓の病気によって肝機能が低下すると、胆汁の分泌量も低下して食べ物が消化・吸収されにくくなります。更に胆汁の分泌量が低下することで、胆汁の構成要素であるビルビリンが体中に留まるようになり、皮膚や白目、爪が黄色く変色する黄疸を引き起こします。
肝臓・胆のう・膵臓の
よくある病気
肝臓の病気
B型肝炎
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで肝臓に炎症を引き起こす病気です。主な感染ルートは、胎児の時の母親からの母子感染や性行為、刺青などの傷が挙げられます。 一般的にB型肝炎は自覚症状が出ずに、本人も気づかないまま自然治癒することもありますが、稀に劇症肝炎や肝硬変、肝臓がんなどの重篤な病気へと進行するケースもあり、注意が必要です。特に母子感染などで3歳までにB型肝炎に感染すると、B型肝炎ウイルスが持続的に体内に残り、将来的に慢性肝炎・肝硬変へと進行するケースが多いです。
主な治療は、核酸アナログ製剤の内服薬やインターフェロン注射などの薬物療法です。また、B型肝炎ワクチンを接種することで、感染を予防することが可能です。
C型肝炎
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することで、肝臓に炎症を引き起こす病気です。C型肝炎に感染すると、その後7割が慢性肝炎へと移行します。また、C型肝炎は放置すると肝硬変や肝臓がんへと進行する恐れがあり、注意が必要です。なお、日本において肝臓がんの原因の1位はC型肝炎からの進行です。 従来の治療法ではインターフェロン注射と内服薬の併用が中心でしたが、近年では医療の進歩により、内服薬のみで治療することが可能となっており、95%以上の症例で治癒が期待できます。
アルコール関連肝疾患(ALD)
これまでアルコール性肝障害やアルコール性脂肪肝と呼ばれていた病気は、最近、アルコール関連肝疾患(Alcohol Associated (Related) Liver Disease(ALD))という名称に変更になりました。アルコール関連肝疾患とは、長期間の過度な飲酒習慣によって肝臓がダメージを受け、肝機能の低下を引き起こす病気です。平均的な飲酒量と長期的な健康リスクの関係については病気の種類によってさまざまなであり、肝硬変では平均的な飲酒量が少ないうちはリスクの上昇はわずかですが、平均飲酒量が多くなるとリスクがより高くなるのが特徴です。
過度の飲酒の定義
- 男性:
純アルコール摂取量60g/日以上
(500mlビール缶を3本、日本酒2合、焼酎ロック3杯(300mL) - 女性:
純アルコール摂取量40g/日以上
(500mlビール缶を2本、日本酒1合、焼酎ロック2杯(300mL)
また厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21(第二次)」では、1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上の方は脂肪肝をはじめとする生活習慣病のリスクを高めるとされており、注意が必要です。
節度ある適切な飲酒量は、1日当たりの純アルコール摂取量が20g程度とされています。ただし、女性や高齢者、お酒を分解する力が弱い方(飲酒後に顔が赤くなる方)はより少量の飲酒が適当です。
治療
アルコール関連肝疾患の根本治療は節酒・禁酒です。アルコール関連肝疾患の疑いがある場合には、できるだけ早めに節酒・禁酒を心がけましょう。ただし、健康診断等で肝機能異常を指摘された場合、アルコール関連肝疾患以外の病気の可能性もありますので、できるだけ早めに当院までご相談ください。
代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)
代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)とは、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧などの代謝機能の異常に関連し、飲酒を原因としない脂肪肝のことです。以前はNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれていましたが、2023年に国際的に名称が変更されました。MASLDは慢性肝疾患の中で最も多い疾患で、最近特に注目されています。MASLDは世界の成人の約38%が該当し、日本でも2200万人以上いると推定されています。特に肥満者では約75%、2型糖尿病の方では約65–69%がMASLDを有するという報告があります。
MASLDには単純脂肪肝から炎症・線維化を伴うMASH(代謝異常関連脂肪性肝炎、旧称NASH(非アルコール性脂肪性肝炎))に進行し、さらには肝硬変・肝癌に至ってしまうこともあり、注意が必要です。
主な原因は、偏った食事習慣や運動不足などの生活習慣の乱れ、ストレスなどです。最近では、体質(遺伝的な原因)や腸内細菌など、肥満や生活習慣以外の要因も影響することが明らかになってきました。多くは生活習慣の乱れが原因ですので、予防には生活習慣の改善が大切です。
薬物性肝障害
薬物性肝障害とは、薬の影響によって肝機能が低下する病気です。原因となる主な薬としては、解熱鎮痛薬や抗生物質、精神神経薬、抗がん剤などが挙げられますが、市販薬や漢方薬、またはサプリメントなど薬ではないものが原因となることがあります。
自己免疫性肝炎
自己免疫性肝炎は多くは慢性に経過し、肝臓が炎症を起こす病気で、国から難病指定されている病気の一つです。女性に多く見られる特徴があり、男性に比べて女性の罹患者は約4倍と報告されています。 はっきりとした原因は解明されていませんが、自己免疫性肝炎の方は血液中の抗体の数が増加している特徴があることから、免疫異常が発症に関与していると考えられています。
胆道(胆のう・胆管)の病気
胆石症
胆石とは、胆汁の通り道(胆道)で、胆汁を構成するコレステロールやビリルビンなどが固まってできた石のことを指します。結石ができる部位によって、肝臓内の胆管にできる「肝内(胆管)結石」、肝臓外の胆管にできる「総胆管結石」、胆のうにできる「胆のう結石」に分類され、これらの結石がさまざまな症状を引き起こす病態を総称して胆石症と呼びます。
胆石症では自覚症状のない場合もありますが、胆石が胆のうや胆管を塞ぐと、右上腹部の痛み、みぞおちの違和感、背中への放散痛、吐き気などが現れることがあります。
症状が軽くても放置すると胆のう炎や膵炎へ進展する可能性があるため、症状がある場合や健診で胆のうの異常を指摘された場合は、早めの検査が重要です。 また、胆のう結石は胆のうがん、肝内結石は肝内胆管がんの発生リスクを高めると考えられており、適切な診断と治療が必要です。
胆のう炎・胆管炎
胆のう炎・胆管炎は、胆のうや胆管に炎症が起きる病気です。胆石が原因で発症することが多く、右上腹部の強い痛み、発熱、悪寒、黄疸、吐き気などが症状として現れます。特に胆管炎は重症化すると敗血症など命に関わることもあります。症状の有無にかかわらず、右上腹部の違和感や健診で胆のうの異常を指摘された場合は、早めに当院にご相談ください。
胆管がん・胆のうがん
胆のう・胆管がん(胆道がん)とは、胆汁の通り道に発生する悪性腫瘍の総称で、胆のうに発生する胆のうがんと、肝内外の胆管に発生する胆管がんに分けられます。また、肝内結石、胆道の先天的異常などは、胆のうがん・胆管がんの発生リスクを高めると考えられています。 日本では比較的まれながんとされており、初期には明確な自覚症状が現れにくく、進行してから発見されることが多いのが特徴です。
黄疸、体重減少、腹部の張りや違和感、食欲不振などが現れた場合は注意が必要です。定期的な健診や超音波検査で早期に発見することが大切です。
閉塞性黄疸
閉塞性黄疸は、胆管が胆石や腫瘍などで詰まることで起こる黄疸です。典型的な症状として、皮膚や白目が黄色くなるだけでなく、尿が濃くなる、便の色が薄くなる、腹痛、発熱、かゆみがあります。これらは、胆汁の中のビリルビンが体内に蓄積することによって起こります。放置すると肝機能障害や感染症につながるため、症状を自覚した時点で早期の検査が必要です。
膵臓の病気
膵炎(急性・慢性)
急性膵炎は突然起こる強いみぞおちの痛みや背部痛が特徴で、吐き気・嘔吐を伴うことがあります。重症化すると全身状態が急激に悪化することもあるため、早期の受診が重要です。 一方、慢性膵炎は長期間にわたって炎症が続くことで膵臓の機能が徐々に低下し、腹部の不快感、消化不良、脂肪便、体重減少などが見られます。アルコールの長期摂取や胆石が原因となることが多く、症状がある場合は早めの診断と適切な治療が必要です。
膵のう胞、
膵管内乳頭状粘液産生腫瘍(IPMN)
膵のう胞とは、膵臓の中に液体がたまってできる“袋状のふくらみ”のことです。 健診の超音波検査などで偶然見つかることが多く、ほとんどの場合は自覚症状がありません。ただし、のう胞が大きくなり、膵液の通り道である膵管を圧迫すると膵液の流れが悪くなり、腹痛や腹部の張りや違和感、食欲不振などの症状が出ることがあります。 また、のう胞の袋の内面が腫瘍性細胞で被われている場合はのう胞性腫瘍と呼びます。多くの場合、のう胞の内容液はネバネバとした粘液です。膵管内乳頭状粘液産生腫瘍(IPMN)は代表的な膵のう胞性腫瘍で、健診の腹部エコーで偶然発見されることがしばしばあります。膵のう胞性腫瘍はがん化することがあるため注意が必要で、定期的に画像検査を行う必要があります。
当院では、主に超音波検査での定期的なチェックを行い、のう胞が大きい場合や変化が見られた場合には、高度な検査や治療が可能な医療機関をご紹介し、安心して受診できるようサポートいたします。
膵臓がん
膵臓がんは、膵臓に発生する悪性腫瘍で、初期にはほとんど症状が現れません。 症状が出る頃には進行していることが多く、みぞおちや背中の鈍い痛み、原因のない体重減少、黄疸、食欲不振などがみられることがあります。また、膵臓の働きに関わるインスリンの分泌が障害されることで、新たに糖尿病を発症することがあるのも特徴です。
膵臓がんは早い段階から、血流やリンパ管を通じて肝臓、腹膜、リンパ節、場合によっては肺や骨などに広がることがあり、転移しやすい性質があります。 早期発見が難しいため、膵のう胞を指摘された方や膵臓に異常が疑われる方は、定期的な検査による経過観察が重要です。
膵臓がんが疑われる場合は、高度な検査や治療が可能な医療機関をご紹介し、安心して受診できるようサポートいたします。
当院では
腹部エコー検査も対応
当院では、肝臓の状態を詳しく調べるために肝臓エコー(腹部超音波検査)を行っています。 この検査は痛みがなく安全で、肝臓の形や大きさ、脂肪の沈着、腫瘍やのう胞の有無などを確認することができます。検査時間は10〜15分程度で、放射線を使用しないため妊娠中の方や高齢の方でも安心して受けていただけます。
結果はその場で医師が確認し、必要に応じて生活習慣の見直しや追加検査・治療についてご説明いたします。
エコー検査は、次のような方に特におすすめです。
- 健康診断で肝機能異常(AST・ALT・γ-GTPなど)や胆のうの異常を指摘された方
- 右上腹部の痛みや違和感、食後のもたれ、背中の痛みなどの症状がある方
- 黄疸や体重減少、腹部の張りを感じる方
- 膵臓や胆のうに腫瘍・のう胞などの経過観察が必要な方

