胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは、胃酸によって胃や十二指腸の粘膜が傷ついている状態です。代表的な症状はみぞおち付近のキリキリするような痛みです。
病状が悪化すると、出血し、吐血や血便を認めることもあります。傷が深くなると、大出血や胃や十二指腸が破れてしまう(穿孔)こともあり、早めの診断・治療がとても重要です。
放置せずに、早めに診断・治療を行えば、内服での治癒が可能です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因
ピロリ菌
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の最も多い原因はピロリ菌です。ピロリ菌は、ヒトの胃の中に生息する細菌です。
ピロリ菌が胃の粘膜を傷つけ、胃潰瘍・十二指腸潰瘍を引き起こします。どのようにしてピロリ菌が感染するのかは明確には解明されていませんが、口から入ってくる経口感染が主な感染経路と考えられています。母親など家族からの感染、保育園や幼稚園等での感染、環境整備がされていない時代の井戸水の摂取などによる感染が推定されています。現在では上下水道の整備により、井戸水からの感染の報告はほとんどありません。
ピロリ菌の除菌治療を行うことで胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発予防ができます。また、ピロリ菌は胃がんの発癌にも関与しており、ピロリ菌がいる方はピロリ菌がいない方と比べて、胃がんになるリスクが20倍以上とされています。ピロリ菌の除菌を行うことで、胃がんのリスクを約半分まで減らすことができます。
これまでに胃潰瘍・十二指腸潰瘍を発症したことがある方や繰り返している方、気になる症状がある方は一度内視鏡検査(胃カメラ検査)とピロリ菌の検査(内視鏡時の迅速検査、血液検査でのヘリコバクター・ピロリ抗体検査など)をお勧めします。
薬の副作用(非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs))
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、解熱鎮痛剤や血液をサラサラにする薬として使用される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が原因となることがしばしばあります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は胃粘膜を守る物質の分泌を抑える働きがあるため、胃粘膜が傷つきやすくなります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は数回内服しただけでも胃潰瘍や十二指腸潰瘍になってしまうこともあります。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を内服中の方で、みぞおちの痛みなどの症状のある方は早めの受診をお勧めします。
生活習慣
環境の変化などの精神的なストレスによって、胃酸過多になり、潰瘍を発症する危険があります。適度な運動や十分な睡眠を心がけ、ストレスがたまらないように心がけましょう。またバランスのよい食事を取ることを心がけ、暴飲暴食、過度のアルコール・カフェインの摂取は控えましょう。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状
- 胃痛(キリキリするような痛み)
- 便が黒い
- 吐血
- 血便
- 胃もたれ
- ふらつき、息切れ
- 気分不良
- 食欲不振
- 吐き気
- 嘔吐
- 腹部膨満感
特に「便が黒い」や「吐血」がみられた場合は、潰瘍が深くなり、出血している危険が高いですので、すぐに受診してください。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の診断
内視鏡検査(胃カメラ)
内視鏡検査(胃カメラ)とは、口から内視鏡を挿入し、胃や十二指腸の中を直接観察する検査です。胃や十二指腸の中を直接観察することができますので、胃や十二指腸にどのような異常があるのかが正確に分かります。必要があれば、内視鏡検査中に組織検査やピロリ菌の迅速検査を行う場合があります。
当院では内視鏡検査の際に、患者さんごとに麻酔の量や種類を細かく調整し、きつくない内視鏡検査を行っています。
最近では、比較的若い方であっても、胃がんが見つかることが増えています。胃がんの早期発見のためにも定期的な胃カメラ検査をお勧めします。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療
胃酸の分泌を抑える制酸剤(プロトンポンプ阻害剤)の内服を行います。
胃潰瘍の場合は8週間、十二指腸潰瘍の場合は6週間の内服が基本です。ピロリ菌の感染が確認された場合には、潰瘍の再発予防のためにピロリ菌の除菌治療を行います。ピロリ菌の除菌は、潰瘍が治った後に行い、ピロリ菌の除菌の薬を1週間内服して頂きます。
また潰瘍の傷が深く、胃カメラ検査時に潰瘍から出血している場合は内視鏡的止血術を行います。
内視鏡的止血術を行う方は、入院での治療が望ましいため、当院と連携している基幹病院にご紹介致します。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の
よくある質問
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は何歳くらいに多い?
胃潰瘍は40~60代、十二指腸潰瘍は10代後半~30代の比較的若年層に多く見られます。また、男女比はおよそ3:1です。
胃潰瘍と十二指腸潰瘍の違いはなに?
どこに潰瘍ができているかで、呼び方が異なります。胃にできるものが胃潰瘍、十二指腸にできるものが十二指腸潰瘍です。共通点もありますが、胃潰瘍は胃に食べものがある時に痛みの症状が出やすいのに対し、十二指腸潰瘍は空腹時や深夜に痛みの症状が出やすいという特徴があります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は放っておいても治る?
症状が軽い場合は、自然治癒することもありますが、放置すると出血や穿孔(穴が開くこと)、胃がん発症へとつながる恐れがあります。 胃痛・胃もたれ・吐き気・黒色便など気になる症状がある場合は、早めにご相談ください。
十二指腸潰瘍の生存率はどのくらい?
出血や穿孔を伴わない場合、十二指腸潰瘍が原因で亡くなることは稀ですが、出血や穿孔を伴うほど悪化すると、命にかかわります。胃潰瘍・十二指腸潰瘍で入院した患者さんの死亡率は、約3%と言われています。特に出血を伴うケースでは、死亡率は約6%に上昇しますが、出血そのものが直接の死因となるのは全体の2割未満で、多くの場合は多臓器不全や心肺機能の低下など、他の病気や合併症が原因で無くなることが多いとされています。
十二指腸潰瘍は再発しやすい?
十二指腸潰瘍は再発しやすい病気です。ピロリ菌感染がある場合は、潰瘍を完治させたとしても除菌治療を行わない限り、再発率は高くなります。また、ピロリ菌の感染以外にも薬の副作用や生活習慣によって再発するリスクがあります。 十二指腸潰瘍治療後、再発を防ぐためには、ピロリ菌の除菌と生活習慣の見直しが大切です。

