下痢が止まらない、
食後すぐに下痢になる

便の形

水分を多く含む泥状の便を「軟便」、ほとんどが水分で構成されている水っぽい便を「下痢便」と言います。

便の水分量

便は水分量によって分類されます。一般的に水分量が7〜8割が正常な便で、8〜9割の便を軟便、それ以上を下痢便と定義します。

下痢の持続期間

下痢には、急性下痢と慢性下痢の2種類があります。一般的に数時間〜2週間で自然と改善する下痢を急性下痢、それ以上継続する下痢を慢性下痢と分類します。

すぐに受診が必要な下痢

以下のような特徴の下痢症状が現れている場合には緊急性を伴う可能性があるため、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

消化器内科の受診を
おすすめする下痢

急性下痢

急性下痢とは、突然下痢症状を起こした後、数時間〜2週間で自然と改善するタイプの下痢です。
主な原因は、細菌・ウイルス感染による急性腸炎です。細菌では、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、病原性大腸菌（O-157など）、腸炎ビブリオなどがあります。また、ウイルスでは、ノロウイルスやロタウイルスなどが挙げられます。感染以外にも、急激な腹部の冷えや非感染性腸炎などが原因の場合もあります。

慢性下痢

慢性下痢とは、一般的に3〜4週間、あるいはそれ以上の期間症状が続くタイプの下痢です。
主な原因としては潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸がんといった病気のほか、ストレスや自律神経の乱れによって引き起こされる過敏性腸症候群、薬の影響などが考えられます。

食中毒・感染性腸炎

食中毒を起こすと激しい下痢症状を引き起こします。また、下痢とともに発熱や吐き気、嘔吐などの症状を伴うこともあります。
食中毒を引き起こす主な細菌・ウイルスとしては、黄色ブドウ球菌、病原性大腸菌（O-157）、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、サルモネラ菌、ノロウイルス、ロタウイルスなどが挙げられます。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは、検査をしても大腸の炎症や病気などの器質的異常が見られないにもかかわらず、下痢と便秘を繰り返す病気です。症状によって、下痢型、便秘型、混合型、分類不能型の4種類に分類されます。
原因はまだはっきりとは明らかになってはいませんが、ストレスなどによる自律神経の乱れや腸の蠕動運動の低下などが考えられています。

過敏性腸症候群

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは大腸粘膜に原因不明の炎症が起きることで持続する腹痛や下痢、血便などの症状を引き起こす病気で、クローン病と並んで代表的な炎症性腸疾患の1つです。また潰瘍性大腸炎は国の指定難病になっています。
30歳以下の成人で発症することが多いですが、小児や50歳以上の年齢層でも発症することがあります。症状が強く現れる活動期と症状が安定している寛解期があり、治療によりまず活動期の症状を安定させた後は症状が安定している寛解状態をできるだけ維持することが大切です。

潰瘍性大腸炎は治癒する病気ではないため、良い状態を維持することが重要であり、生涯にわたって専門医による継続的な管理・治療が必要です。

大腸ポリープ・大腸がん

大腸ポリープや大腸がんは、初期の段階では自覚症状に乏しいため、気づかないうちに進行しているケースが多く、注意が必要です。便が腸管を通過する際に腫瘍が擦れて出血し、血便を起こすことがあります。
大腸ポリープや大腸がんは大腸カメラ検査でのみ確認することが可能です。

急性下痢

急性下痢の原因の多くは細菌やウイルス感染のため、検便や血液検査を行い、原因となっている細菌・ウイルスを特定します。

慢性下痢

慢性下痢の場合には、血液検査や大腸カメラ検査を行い原因を特定します。特に大腸ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患（潰瘍性大腸炎、クローン病など）が原因の場合には、大腸カメラ検査が必須です。大腸カメラ検査は、肛門から内視鏡スコープを挿入して大腸粘膜の状態を直接確認することができる検査で、大腸ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患の有無を詳しく調べることが可能です。

大腸カメラ検査

急性下痢の治療

急性下痢の原因のほとんどは細菌やウイルス感染であるため、整腸剤や抗菌薬での治療を行います。また、症状の程度によっては水分補給とともに点滴も合わせて行うことがあります。
なお、市販の下痢止め薬を使用すると、細菌やウイルスが体外へ排出されるのを阻害してしまう恐れがあるため、自己判断で使用せずに事前に医師に相談するようにしましょう。

慢性下痢の治療

慢性下痢の場合には、大腸がん、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患などの可能性がありますので、まずは原因をしっかりと調べることが大切です。そのうえで、原因に応じた適切な治療を行います。慢性下痢の場合の食事はうどんやお粥、バナナ、りんごといった消化に良いものを選択するようにし、脂分の多いものや刺激物、アルコールなどは控えるようにしましょう。その他では、薬の副作用が原因と考えられる場合には、医師の判断によって減薬や薬の変更を検討することがあります。

食べるとすぐに下痢になる
ときの考えられる原因

過敏性腸症候群（IBS）

過敏性腸症候群とは、検査で器質的異常が見られないにもかかわらず、下痢と便秘を繰り返す病気です。症状によって、下痢型、便秘型、混合型、分類不能型の4種類に分類されます。
原因ははっきりとは明らかになってはいませんが、ストレスや緊張、不安などの精神的要因による自律神経の乱れや腸の蠕動運動の低下などが考えられています。腹部の張りや腸にガスが溜まりやすいなどの特徴も見られます。

過敏性腸症候群

胆汁性下痢

胆汁性下痢とは、肝臓で生成される胆汁が小腸で十分に吸収されないことで、大腸粘膜の水分分泌を促進し、便の水分量が増加して発症する下痢です。脂分の多い食事の後に症状が悪化する特徴があります。胆のうの摘出手術などによって胆汁の分泌が過剰になることなどが原因になることがあります。

膵外分泌不全

膵外分泌不全とは、慢性膵炎などによって膵臓から消化酵素の分泌量が不足することで、食事をうまく消化することができなくなって引き起こされる下痢です。脂分の多い食事の直後に下痢をするという特徴があります。

乳糖不耐症

乳糖不耐症とは、牛乳やチーズ、ヨーグルトといった乳製品を消化吸収する消化酵素であるラクターゼの分泌量が不足することで引き起こされる下痢です。

セリアック病・小腸の吸収異常

セリアック病とは、小麦などの食品に含まれるグルテンを摂取することで、身体が過剰反応を起こす自己免疫疾患です。グルテンを含む食事を摂ると下痢症状を起こすほか、栄養不足や体重減少などの症状を引き起こすこともあります。

大腸の病気

慢性的な下痢症状が長期間継続している場合には、大腸がんや大腸ポリープ、炎症性腸疾患（潰瘍性大腸炎やクローン病）などの大腸の病気が原因の可能性があります。下痢とともに血便や粘性便などの症状を伴うこともあります。
これらの病気を診断するためには大腸カメラ検査が必須です。

大腸カメラ検査

摂取してほしい食べ物

主食は白米やパンなどとし、タンパク質は豆腐や卵など消化に良いものを選択しましょう。また、脂分の多い食事も症状の悪化を招くため、炒め物や揚げ物はできるだけ控えるようにし、調理では煮る、茹でる、蒸すなど脂をあまり使わない方法で行うと良いでしょう。
以下は、下痢の際におすすめの主な食品です。

控えていただきたい食べ物

食物繊維が多い食べ物

食物繊維は腸の働きを活発にして下痢症状の悪化を招く恐れがあるため、食物繊維を多く含む食品は控えましょう。以下は、食物繊維を多く含む主な食品です。

刺激の強い食べ物・嗜好品

刺激の強い食品は消化に悪いため、控えるようにしましょう。
以下は、刺激の強い主な食品です。

ガスを発生させやすい食べ物

腸内でガスを多く発生する食品は腸を刺激して症状の悪化を招く恐れがあるため、控えましょう。
以下は、ガスを発生させやすい主な食品です。

飲み物

下痢の時は多量の水分が排出されて脱水症状を引き起こす恐れがあるため、注意が必要です。そのため、水分補給を行う際には利尿作用の低いものを少しずつこまめに摂るようにしましょう。
最も理想的なものは、水分や電解質を吸収しやすい経口補水液です。スポーツドリンクや糖分の少ないジュース、スープなどもおすすめです。一方、アルコール類やカフェインを多く含む緑茶類・コーヒー類などは脱水症状を助長するため、控えましょう。
水分摂取はたくさんの水分を一度に飲むのではなく、小分けにして少量の水分を頻回に摂取するようにしましょう。また、あまり冷たくない常温の水分がよいでしょう。