お腹の張り(腹部膨満感)

お腹の張りとは

お腹の張りとは腹部に張りや違和感、痛みなどを感じる状態が「お腹の張り」(腹部膨満感)です。お腹の張りは、主に便秘などが原因で腸内にガスが蓄積することで引き起こされるタイプと、何らかの原因で胃腸の働きが低下することで引き起こされるタイプがあります。また、腹腔内の炎症や腫瘍、妊娠などが原因となることがあります。
お腹の張りでお悩みの場合には、自己判断で放置せずに一度当院までお気軽にご相談ください。


お腹の張りの原因

お腹にガスが溜まる

食事を取ると、食べたものに含まれていた空気や食べたものを消化した際に発生したガスが、腸内に蓄積します。
通常であればこれらのガスは呼気やおならによって自然と体外に排出されますが、食事習慣の乱れなどによる悪玉菌の増殖や過度なストレスなどによって自律神経のバランスが乱れると、上手にガスを排出できなくなるため腹部にガスが溜まり、腹部膨満感や鼓腸を発症します。

消化器の病気

腹部膨満感は、何らかの病気の一症状として現れることもありますが、胃がんや大腸がんといった消化器系のがんが原因となることがありますので、注意が必要です。胃がんや大腸がんは初期の段階では自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行しているケースも多く見られます。
そのため、原因不明のお腹の張りや痛みが続いている場合には、自己判断で放置せずにできるだけ早く医療機関を受診して、精密検査を受けるようにしましょう。

女性特有の要因

女性は男性に比べて姿勢や腸の形状、運動習慣、女性特有の病気など腹部膨満感を引き起こす原因が多いため、一般的に腹部膨満感は男性よりも女性の方が多く見られます。
便秘は女性に多い病気の一つですが、便秘になると排出されない便が腸内に留まり続けることで周囲を圧迫し、腹部膨満感を引き起こします。また、女性は月経前になると腸の働きが低下するため、腹部膨満感を起こしやすくなります。その他、子宮筋腫などの婦人科系疾患も腹部膨満感の原因となることがあります。
気になるお腹の張りが長期間持続している場合には何らかの病気が関与している可能性もありますので、できるだけ早めに当院までご相談ください。


お腹の張りで考えられる病気

お腹の張りや腹部膨満感は以下のような病気が原因となることがあります。

逆流性食道炎

逆流性食道炎とは、食道と胃の間にある下部食道括約筋の働きが低下することによって胃酸や胃の内容物が胃側から食道側に逆流する病気です。主な症状としては、胸焼けや呑酸、喉の違和感、胸痛などのほか、腹部膨満感を起こすこともあります。
逆流性食道炎は放置すると食道粘膜の炎症が重症化し、食道がんへと進行する恐れもあるため、注意が必要です。

逆流性食道炎

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアとは、胃や腸に器質的異常がないにもかかわらず、食後の胃もたれや胃のむかつき、胃痛、吐き気、みぞおち痛などの症状を引き起こす病気です。お腹の張り(腹部膨満感)を引き起こすこともあります。

機能性ディスペプシア

急性胃腸炎

急性胃腸炎とは、細菌・ウイルス感染や生活習慣の乱れ、薬の副作用、アレルギーなどが原因で突発的に胃腸の粘膜に炎症が起きる病気です。主な症状としては、発熱や腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、全身倦怠感などのほか、腹部膨満感を引き起こすこともあります。

腹部の腫瘍

胃がんや大腸がん、膵臓がんなどのおなかの中の臓器にがんができると、がんが周囲の組織を圧迫し、腹部膨満感を引き起こすことがあります。また、女性の場合は卵巣がんなどの婦人科系のがんでも腹部膨満感を起こすことがあります。

腸閉塞

腸閉塞(イレウス)とは食べたものの通り道である腸が閉塞し、腸の内容物が滞留する病気です。腸閉塞は、腸管の癒着や腸の腫瘍などが原因で発症する機械的イレウスと、腸の蠕動運動の働きが低下することで発症する機能的イレウスの2種類に分類されます。正式には、癒着や腫瘍などにより物理的に腸が閉塞してしまった前者は「腸閉塞」、腸が麻痺してしまって動かなくなってしまった後者は「イレウス」と呼びます。主な症状は、激しい腹痛や吐き気、嘔吐などの他、腹部膨満感があります。

便秘

便秘症状が長期化すると、排出されない便が腸内に滞留して周囲を圧迫し、お腹の張りや腹部膨満感を引き起こすことがあります。

便秘

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは、腸に器質的異常がないにもかかわらず、便秘や下痢、排便痛などの他、お腹の張りや腹部膨満感などの症状を引き起こす病気です。はっきりとした原因は明らかになってはいませんが、過度のストレス・不安といった心的要因や腸内環境の乱れなどが関与していると考えられています。

過敏性腸症候群

呑気症

呑気症とは、早食いや炭酸飲料の過剰摂取、ストレスによる無意識な過呼吸などが原因で腹部に過剰な空気が蓄積する病気です。主な症状として、げっぷやおならが多く出る、胸のつかえ感・違和感などの他、お腹の張りや腹部膨満感があります。


お腹の張りの治し方とは?
自宅でできるセルフケア

お腹が張っている場合には、以下の方法で症状を改善することができます。ただし、お腹の張りの原因が何らかの病気や妊娠の場合には、自己判断で行わずに医師の指示に従うようにしましょう。また、これらの取り組みを行っても症状が改善しない場合には、できるだけ早めに当院までご相談ください。

ストレス発散

過度なストレスによって腸の蠕動運動が低下すると、便秘やガスの滞留などを引き起こし、お腹が張るようになります。日常生活の中で上手にストレスを発散するよう心がけましょう。

食事内容の改善

偏った食事習慣を続けると、腸内環境が悪化してお腹の張りなどの症状を引き起こします。食事の際には過食や早食い、脂分の多い食品の過剰摂取などは控え、バランスの良い食事を心がけるようにしましょう。

生活習慣の見直し

暴飲暴食や運動不足、過度なストレスの蓄積などによって自律神経のバランスが乱れると、胃腸の働きが低下し、便秘やガスの滞留を起こしてしまうため、お腹が張るようになります。お腹の張りでお悩みの場合には、生活習慣を整えることが大切です。

お腹のマッサージ

手のひらを使って下腹部に「の」の字を描くように優しくマッサージすると、お腹の張りを解消させる効果が期待できます。また、骨盤を大きく回す、腰を捻るなどの運動も腸の働きを活性化させ、お腹の張りの予防に繋がります。


お腹の張りがある時の食べ物

バランスの良い食事習慣を取り入れることは、腸内環境を正常に整えてお腹の張りや腹部膨満感を予防する上で大切です。
以下は、お腹の張りや腹部膨満感の予防に効果的な食品と、避けた方が良い食品です。

摂取したい食べ物

乳酸菌・ヨーグルト

乳酸菌・ヨーグルトお腹の張りを引き起こす原因の一つとして、腸内の悪玉菌の増殖が挙げられます。そのため、乳酸菌飲料やヨーグルトを多く摂取して腸内の善玉菌の量を増やすことは、お腹の張りの予防や改善に役立ちます。

生姜

腸内にガスや便が滞留してお腹が張っている場合には、生姜の摂取が有効です。生姜に含まれるジンゲロールやショウガオールといった成分には、消化や腸内ガス排出を促進する効果があり、お腹の張りを解消させることができます。

アボカド・バナナ

アボカドやバナナに多く含まれるカリウムは体内の過剰なナトリウムや水分を排出し、腸の蠕動運動を活性化させる効果が期待できます。これにより、腸内のガスや便の排出を促し、お腹の張りを解消させることができます。

控えていただきたい食物

食物繊維

一般的に食物繊維は体に良い栄養素とされていますが、お腹が張っている時に過剰摂取するとかえって症状を悪化させる恐れがあるため、注意が必要です。
食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類がありますが、水溶性食物繊維は腸で消化される過程で二酸化炭素やメタンなどのガスを発生させるため、お腹の張りを悪化させることがあります。また、不溶性食物繊維は腸の働きを活性化する一方で、便のかさが増してお腹の張りを悪化させることがあります。
なお、水溶性食物繊維を多く含む代表的な食品としては果物類、海藻類などがあり、不溶性食物繊維を多く含む代表的な食品としては豆類、きのこ類、ごぼう、キャベツ、玄米などがあります。


お腹の張り(腹部膨満感)に
お悩みではないですか?

以下に該当する症状にお悩みの場合には、できるだけ早めに当院の消化器内科までご相談ください。

  • お腹の張りが長期間続いている
  • 下腹部に張りや痛みが生じている
  • お腹のむくみ・腫れが気になる
  • お腹がパンパンに張っている
  • 食事を取るとすぐにお腹いっぱいになる
  • 胃が張っている感覚がある

など


お腹の張り(腹部膨満感)の
よくある質問

今すぐ効くガス抜きの方法は?

腹部に溜まったガスを抜く方法としては、簡単な運動やマッサージなどが有効です。簡単な運動では、うつ伏せの状態で複数回深呼吸をする、仰向けの状態で両膝を抱える(ヨガのガス抜きポーズ)、左右にゆっくりと体を転がすなどが効果的です。マッサージでは、おへそを中心に手のひらを使って「の」の字を描くように軽くさすりましょう。 その他では、食後に10〜15分軽いウォーキングをする、暖かい白湯を飲む、動きづらい服やベルトの締め付けを避けるなども、腸の働きを活発にし、ガス抜きに効果的です。

よくお腹が張る症状はがんの症状と関係がある?

お腹が張る原因には様々で、多くの場合は一時的な症状ですが、胃がんや大腸がん、卵巣がんといった重篤な病気が原因となることがあります。特にお腹の張りとともに血便が出る、便が細くなった、体重が減少している、発熱を伴う、夜間に腹痛を起こすなどの症状を併発している場合にはがんの可能性があるため、速やかに医療機関を受診してください。血縁者に大腸がんの既往歴がある場合も要注意です。

快便でもお腹が張ることはある?

日々の便通に異常がないにもかかわらずお腹が張る場合には、何らかの病気が関与している可能性があります。考えられる原因疾患としては、過敏性腸症候群や機能性ディスペプシア、小腸内細菌異常増殖症などが挙げられます。その他では、乳糖不耐症やフルクタン過敏症、胆のう・膵臓の機能低下なども原因となり得ます。 特に食後すぐにお腹が張る場合やげっぷ・おならが多く出る場合にはできるだけ早めに医療機関を受診するようにしましょう。

デスクワークでお腹が張る時の対処法は?

デスクワークが多い方は、動かないことにより腸の動き(蠕動運動)が鈍り、その結果お腹にガスが溜まりやすくなります。 解消のために、30分〜1時間ごとに立ち上がって軽く動く、腹式呼吸や腹部マッサージを取り入れる、水分と食物繊維を十分に摂り、食事をゆっくり噛んで食べる、正しい姿勢を保つ、ストレスを軽減することなどを心がけましょう。

たくさん息を吐けば、お腹の張りは良くなる?

お腹の力を使った呼吸法である腹式呼吸には、お腹の張りを解消する効果があります。腹式呼吸を行うと、リラックス効果によって腸の働きを促進し、お腹の張りを改善させることができます。また、腹式呼吸によって横隔膜と腹筋が上手に連携することで腹圧が調整され、お腹に溜まったガスの排出を促す効果も期待できます。